id:deztecさんへのお返事

 

冬野梅子『普通の人でいいのに!』私はこう読んだ - id:deztec

最後の“田中さんは一貫して、そこそこ幸福である”というのはちょっとよく分からない。主人公が幸福を感じていないのはちゃんと作品中に描写されていると思うし。「恵まれている」「善良である」とかなら分かるが。

2020/08/01 17:33

b.hatena.ne.jp

冬野梅子『普通の人でいいのに!』私はこう読んだ - id:deztec

<a href="/type-100/">id:type-100</a> 記事冒頭の、漫画へのブコメの通りです。この記事において私は、「気の持ちよう次第で幸福になれる客観状況なら、実際に選択された主観において不幸であっても幸福の内」という言葉の定義を採用しています。

2020/08/01 17:46

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言葉の使い方が違うのだと言ってしまえば、まあそれで終わる話かもしれませんが。

題はお返事としましたが、deztecさんにボールを投げ返すような話ではありません。特に興味を引かなければ無視していただいてもかまいませんし、不満や当方の不手際がありましたら批判・罵倒していただいてもかまいません。

 

私は元の漫画も読んだし、tyoshikiさんの記事も読みましたが、はてブは残していません。特に言いたいこともなかったし、後で読み返すこともないと思ったからです。

『普通の人でいいのに!』の主人公についてはdeztecさんと同じく、まあ悪人ではないと思います。なんなら善良と言ってもいい。同僚や友人としてなら普通につきあえると思います。けど大嫌いです。絶対に自分はああいう人になりたくないという意味で嫌。そりゃまあ私も人並みに他人を羨んだり蔑んだり自分を偽ったりするしそういう部分を持ってるのは当然だしなんならリディ・マーセナスとかそういう劣等感で悩むキャラクターが好きなんだけど、嫌い。

だってどうみても幸福そうではないから。deztecさんは「絶対的に不幸ではない以上、考え方ひとつで幸せになれる」と書いているけど、実際には考え方を変えられてないわけだから。承認欲求に悩むのが世の常なら、それにどうにかこうにか折り合いを付けて多少のアタラクシアを得て生きていくのも世の常でしょ?

amamakoさんへのリプライに「一人で趣味を追っかけてる分には微笑ましいですが、思春期みたいな周囲との葛藤抱えてるのはかなり引きます」と書いたんですが、阿部共実の描く思春期のキャラ*1とかなら、私はこういう「嫌さ」はほとんど感じなかったと思います。こういう感覚は年齢差別でありましょうし、deztecさんなら他人に対する期待が高すぎるのだと言うのかもしれませんが。

deztecさんの文脈に則るなら、主人公は客観的には「幸福」です。けど主観的には全然幸せではない。そのギャップが読者にネガティブな感情を引き起こしてると思うんですよ。その根源は「俺たちは我慢してるんだからお前も我慢しろ」的な感情かもしれませんが。

 

あと言っても詮無いこととは分かりつつやっぱり言っておきたいんですが、本人の主観を無視して客観的にその人が幸福かどうかを決めるというのは無理がありませんか。「恵まれている」とかの表現ではいけませんか。辞書なども一応引いてみましたが、ちょっと非標準的な使い方ではありませんか。

もちろん言葉をどう使おうが自由ですが、「絶対的に不幸ではない以上、考え方ひとつで幸せになれる」から「気の持ちよう次第で幸福になれる客観状況なら、実際に選択された主観において不幸であっても幸福の内」というのは読み取れないと思いますよ。現実の似たような人の話ではなく、この漫画の主人公の話をしているのなら、考え方を変えた主人公というのはいないわけです。

deztecさんの記事の4章についてもそうなのですが、「漫画らしい空想であり、飛躍であり、つまるところ、実際の田中さんは部屋の中で座っていると考えている」と言われても、実際の田中さんは漫画の表現の中にしかいないわけです。漫画の中の田中さんはやっちゃったわけです。田中さんみたいな人が現実にいたら私はなるべく嫌な顔をせずに接するし何か事情があったんだろうとおもんばかると思いますが、漫画の中の田中さんには嫌なヤツだなーと思いますし、それをネットに書くことが悪いとは思いませんよ。作者のツイッターやノートを多少見ましたがこれは実録漫画でもエッセイ漫画でもないと判断しています。

*1:ちーちゃんはちょっと足りない」のナツとか、読後感最悪の作品ですし田中さんより悪人よりですが、嫌いではありません