『「レアメタル」の太平洋戦争』 金属から見る国力
「レアメタル」の太平洋戦争: なぜ日本は金属を戦力化できなかったのか
- 作者: 藤井非三四
- 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
- 発売日: 2013/07/02
- メディア: 単行本
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最初にちょっと文句を言っておくと、タイトルにレアメタルと銘打っているのにレアメタルをメインに扱っているページが3割ぐらいなのはどうかと思う。資源小国の日本にとってはすべての金属がレアメタルだという理屈は分からないでもないんだけど、やっぱりタイトルにキャッチーな『レアメタル』という単語を使いたかっただけなんじゃないかという気はする。あと著者は歴史・軍事が専門で工学や物理・化学の専門ではないためか、わりと金属に関係ない戦史のトリビアルな話に飛びがちな感はある。
そういうわけで大戦期のレアメタル利用に付いてのみ知りたいという読者には向いていない本かもしれない。
ともあれ単なる歴史好きの人間である自分にはとても面白かった。各金属の国別産出量の表が掲載されているが、コレを見ているといかに日本が金属に恵まれていないかよく分かる。種類は多いが量が圧倒的に足りない。マグネシウムが唯一産出量としては足りているが、電気料金が高いので採算は取れないという具合でなんもかも資源が足りない。
もちろん量だけではなく質も足りていない。ノモンハン事件で日本の戦車はソ連のピアノ線トラップに苦しめられたが、そのピアノ線を日本は実用レベルで量産できなかったそうな。ピアノ線だけで戦争に勝てるわけはないが、戦車に近接戦を挑まざるを得なかった日本兵にとっては、ピアノ線トラップがあればどれだけ戦闘が楽になっただろうかと思わざるをえない。
他にも占領地において旧宗主国が積極的な破壊活動を行った形跡がないにもかかわらず、鉱山の産出量が下がったという話も出てくる。若い技術者が前線にいて特に配置換えなども行われないため、現地にいるのは年寄りと素人だけになる。更には輸送船がポコポコ沈められるため、南方の資源を加工できない。
「自給自足可能な大東亜共栄圏」という理想を切望しつつ、実のところその実現のための手段を全く実行できなかった日本の姿が浮かび上がる。
同時に二次大戦を食料という視点から見た「戦争と飢餓」という本も買ったんだが、読み終わるのはいつになるかなあ……。