酒の「ハレ」とタバコの「ケ」

予防線:ハレとケの概念を提唱した柳田国男先生が死んでから50年経ち著作の幾つかが青空文庫で公開されたそうですが、僕は数年前に遠野物語を読んだきりなのでこの記事の内容は柳田先生の思想とはあんまり関係ないwikipediaで言うところの独自研究であり、たぶんまともな学者が既に形にしているであろう車輪の再発明です。

 

http://d.hatena.ne.jp/michiaki/20120715/1342362680

http://fknews.ldblog.jp/archives/21850051.html

ここらへんの記事を読んで考えたことです。ノンアルコールビールは客観的に見れば普通の炭酸飲料と変わりないものですが、職場で飲むと白い目で見られる。僕もやっぱり職場でノンアルコールビールを飲んでる人がいたら、なんだこの人はと思うでしょう。それを飲むことで職務に支障をきたすことがないとわかっていてもです。僕の職場はあんまり社外の人が入ってくるところでもないので体面が悪いというわけでもありません。僕は酒は好きですがウィスキーや日本酒がメインでビールというものはあんまり好きじゃなく、ノンアルコールビールはそもそも興味がないんですが、ノンアルコールのカクテルなんかで置き換えて考えると、実質タダのジュースと変わりないと思っていてもなんとなく職場で飲むには抵抗はあります。また自宅でもなんとなく昼間に飲むには抵抗があります。

ではなぜ職場でノンアルコールビールを飲むことに抵抗があるかというと、酒というものが「ハレ」の飲み物であり、「ケ」である職場に持ち込んではならないと我々日本人が考えてしまうからではないでしょうか。ノンアルコールビールもビールの代替品として作られており、また我々がそう認識している以上は「ハレ」の飲み物であり、アルコールが脳や精神に与える影響とは関係なく、「ケ」と混ぜてはいけないものなのです。

酒が「ハレ」の飲み物だととらえると酒の迷惑は叩かれないのにタバコの迷惑は厳しく叩かれるというのも理解出来ます。無礼講という言葉が大抵酒の席で使われることからもわかるように、「ハレ」である酒の席では日常のルールは適用されない、されるべきではないと考えてしまう。酒が原因の問題行動に対しても、通常のルールでは裁かれず超法規的に扱われる。まあもちろん法律は酔っ払っていたからといって許してはくれないわけですが、「酒の席でのことですし」「酔っぱらいのしたことですし」みたいな言葉と共になんとなく警察沙汰にはならずに済まされることはよくあることではないかと思います。

タバコもかつて貴重品で金持ち以外はそう毎日スパスパ吸えなかった時代においては「ハレ」の存在だったかもしれませんが、現代日本においては「ケ」の存在でしょう。それこそちょっと前までは仕事中でもみんな普通に吸えていたのです。「ケ」のものだから日常のルールに縛られ、吸う人と周囲の人の健康に害があるとわかった現在は積極的に排除されるようになった。酒は健康に害があるのはみんな知っているし飲酒運転などでいろいろ他人に迷惑をかけるけれど、酒そのものが強く叩かれることはない。愛煙家にとっては歯がゆいかもしれませんが、酒はタバコとは別の論理で日常から排除されているのです。日常からの排除という点ではタバコは「ケ」ではなく既に「ケガレ」になっているのかもしれません。

外国ではノンアルコールはどう捉えられるのかとか、茶やコーヒーはどうなんだろうとかも考えましたが、まとまらないのと面倒くさくなったので、ここまで。