本当に大事なことには、理由なんて無い方がいい 「天気の子」感想

ムショ脱走してから、ずっとニヤニヤしながら見てた。ずっと帆高くんに、やっちまえと無責任に応援しながら見てた。やっちまったなあ。こんなベタなボーイミーツガールを衒いなくやりきって、本当に最高だと思う。

強かったり正しかったりする人間が勝つなんて当たり前のことなんで、むしろ弱くて間違ってる人間に美しさでもって勝利への説得力を与えるのが美術の価値なのではないか。そういう意味で、陰鬱なコンクリートジャングルから一転、晴れ上がった東京の街を駆け抜ける帆高の姿に、こいつは何かを成し遂げるんだろうという説得力を、僕は確かに感じた。逆に言えば、そこに乗り切れなかった人にとっては薄っぺらい物語になるんだろうね。

で、陽菜さんを掠め取って告白する場面で、喝采を送りながらも「コレで向こう数ヶ月はずっと雨なんじゃないか」と苦笑してたんだが、そんな浅慮を飛び越え、めでたしめでたしで着地しなかったのにはぶったまげた。一人と世界を天秤にかけて一人を選んだら、なんだかんだで世界も救われる作品が多い中、世界を捨てて、しかもそれをいい話として描ききったぞ。そうだ、それでいいんだ。ラスト、狂った世界に向けて陽菜さんが祈るシーンが最高に美しい。超常的な力も正しい世界も失われたが、それでも人として生きていくという強さを感じる。これは人間賛歌としての素晴らしさなのだ。