「ミッドサマー」「ジョジョ・ラビット」「ナイブズ・アウト」

24時間で3本映画を見た。

  • ミッドサマー

 下馬評が良かったのでかなり期待してたんだけど正直合わなかった。体が植物化したり食べ物(≒死体)がグネグネ動いたりみたいなドラッグ描写は見応えあったし、白夜の中でのお祭り描写も作り込まれた映像が見れて何というか満足感はあった。ただこの満足感は昔見た「山奥の修道院での敬虔な信仰生活に密着したドキュメンタリー映画」に近い普段見られないもんを見たというだけのことであって、それ以上のもんではないような。

 とにかく段取りが良すぎるというかショッキングシーンの10分前には何が起こるか大体予想が付くので、見ていて結構弛緩していた。人体破壊描写は苛烈だし、鶏小屋のシーンとかそうするかって意外性はあったけど……。じゃあそれが面白いか怖いかっていうと微妙。後頭部殴られて瀕死の時にいびきみたいな音出すのがリアルだっていうのは分かるけど、僕は別にそれを実際に見たわけではないのでリアリティは別に感じないし。緊張感だとジョジョ・ラビットの初対面やゲシュタポのシーンがよっぽどあった感じ。

 冒頭の人間関係のギスギスシーンのイヤーな感じはよくできてると思うんだけど、その分ダニとクリスチャンの2人ともたっぷり嫌いになったというか心が離れたので、頭がスラッシャームービー見るときの脳に切り替わったかも。ダニに感情移入して見れば怖くて面白いのかもしれない。ジョシュを主人公に田舎の超常的奇祭を一歩引いた立場からみる妖怪ハンター的話だったら僕はもっと楽しめたと思うんだけど、まあ監督が見せたいものは違うんだろう。

 ボーイ・ミーツ・ガールなんだけどそれに留まらないというか、少年の成長と外部との交流をすごく丁寧に描いていてとても良い映画だった。典型的なナチの人であるミス・ラームでさえもわずかな描写から彼女にもそれなりの背景がある「普通の人」であることが感じられるし、ほとんど喋らないけどコミカルなフィンケル君もいいし、もちろん重要な役割を持つお母さんとキャプテンKもいい。あと鈍くさいヨーキー少年。

 戦時下でもそれぞれに一生懸命に生きている人がいて、子供目線故に決定的なシーンは見せないながらも戦争によってそれが失われる場面もちゃんと描く、反戦的メッセージを持つ映画でもある。

 まああの状況でジョジョが放置されるのかっていう疑問は正直感じたけど、戦況逼迫でゲシュタポもそれどころじゃなかったということで納得しとこう。

  • ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

 クリスティー風ミステリー映画なんだけど、倒叙物っぽい犯行がばれるかばれないかのサスペンスをやって、そこからさらに一ひねりあるという作りでかなり楽しめた。謎の老婆!怪しい洋館!偏屈な老人の死から親族間の骨肉の争い!家政婦は見た!っていうコテコテな要素も入れつつ、舞台が現代アメリカなんでネトウヨ少年やインスタのインフルエンサー移民問題と適度に外してくるのも小気味よい。

 真犯人はバリバリ怪しい感じはあったが、詳細については僕は分からなかったし、結構ミステリーとしてフェアに面白くできてるんじゃないかと思う。

 タイトルになっているナイフに加え、ボールや犬みたいな小道具の使い方も気が行き届いている。あと長女のリンダさん周りの、親族内では唯一被害者と通じ合ってた感じの描写がホロリときたのも良かった。