OK, but why be moral?

何が良い生き方or良い社会のあり方なのかという論点とは別に、そもそもなぜ良くあらねばならないのかという論点が別にありまして、ヴィーガニズムや反出生主義はそこが弱いんですよね。

個人の価値観や社会制度を自由主義社会主義・民主主義的に変革すると、今までやっちゃいけなかったことができたり、生活が安定したり、政治に参加できるようになったりと、目に見える個人レベルのメリットがあるわけです(もちろん裏にデメリットがあったりもしますが)。

翻ってヴィーガニズムや反出生主義はどうか。既に屠殺や出産に不快感を持っている人間からすれば、それを採用することで不快感から解放されるというポジティブな効果があります。しかし未だそれらに不快感を持っていない人からすれば、一度不快感を持たなければそれらを採用する利得がないし、利得を得たとしてもプラスマイナスゼロに戻るだけだし、むしろ不快感を持つきっかけはそれらのイデオロギーです。

もちろん環境負荷などヴィーガニズムにポジティブな影響がないではありませんが、種差別やアニマルライツ的視点が根本にある以上基本的にそのメリットは副次的なもので、環境負荷が農業と同等の畜産があったとしても諸手を挙げて賛成するわけではないでしょう。

そもそも主義というのは世界に無数にあって、そのほとんどは主義が正しい=無矛盾なものです。いくらヴィーガニズムや反出生主義が正しい=無矛盾でも、それだけではそこから導かれる規律を、個人や社会として採用する理由にはならないわけですよね。宗教もイデオロギーも、現世利益を喧伝しないと広まりません。

ただ理論としてのヴィーガニズムの正しさ=無矛盾さはかなり強いので、幼い頃からヴィーガニズム的な思想を内面化した人間が増えていけば、100年もしないうちに肉食は不道徳として現在のタバコのような地位に押しやられ、排斥されるのではないか、と俺はアンチヴィーガンだけどそう思っています。