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やっぱり日本の中心にある国家神道と、それ以外の諸々の宗教と 「宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学」塚田穂高

 

宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学

宗教と政治の転轍点 保守合同と政教一致の宗教社会学

 

 日本において政治進出に成功した宗教団体というのは、今のところ創価学会公明党ぐらいしか無い。オウム真理教真理党など政治進出を目指した宗教団体は多いが、泡沫政党として消えていった。幸福の科学幸福実現党は地方議会で当選者を出しているようだが、国会での当選には比例区でも程遠い状況だ。

宗教団体の政治への関与には、別の極もある。日本会議には国家神道神道政治連盟以外にも様々な宗教団体が参加しており、独自候補を立てずに主に自民党保守系議員を支援している。その中には神社本庁天台宗といった大組織以外にも、戦前なら異端として弾圧されていたであろう教義を持つような小規模組織も含まれている。noiehoie氏のこのへん(日本会議に集まる宗教団体の面々――シリーズ【草の根保守の蠢動 第3回】 | ハーバービジネスオンライン)とか参照。

宗教団体が政治に関わるとき、この二つの方法があるわけだが、各団体がどちらの道を選ぶかについて、どのような要素がそれを決定しているのだろうか。本書では、「正統ー異端性」と「ナショナリズム」という属性から、様々な宗教団体を分析している。

宗教ナショナリズム

世の中には様々な宗教団体があるが、単に規模が大きければ積極的に政治参加するというわけではない。本書が取り上げている団体の中では、生長の家のように政治関与を打ち切った団体もあれば、浄霊医療普及会=世界浄霊会のように当選の可能性がほぼないことを承知のうえで複数回国政選挙に出馬した団体もある。

では、何が政治参加を分けるかというと「ナショナリズム」である。本書の「ナショナリズム」は民族主義国家主義ではなく、国家観に近い概念だ。現在の日本国や日本社会がどのようなもので、あるべき社会(ユートピア)はどのようなものか、という明確なビジョンがなければ、政治力を持っても達成すべき目標がない。単に政治と結びついて便宜を得るというだけでなく、積極的に政治的主張を発信し、選挙などの活動に関わるかどうかには、ナショナリズムが重要だというわけだ。現代社会に対する危機感や、達成すべき明確な目標を持っていれば、見込みが少なくとも色々と理由をつけて政治に関与していく。

「宗教は個人の心の問題」とする「こころ教」(「こころ教」と「原理主義」の時代が来る?:日経ビジネスオンライン)という現象があるそうだが、逆に言えばそのようなスピリチュアルな団体なら、どれだけ規模を持っても積極的な政治参加は行わないだろう。

本書は①文化・伝統観、②天皇観、③対人類観、④経済的優位観、⑤戦前・大戦観、⑥欧米・西洋観、⑦ユートピア観の7つの指標から、各団体のナショナリズムを分析している。このナショナリズムの性質は、次の「正統」との関係にも関わってくる。

正統、O異端、H異端

日本の精神世界、宗教界における「正統」とは、現在においても国家神道天皇崇拝である。そこからどれだけ距離を取るか、あるいは反天皇かという振れ幅はあっても、他に大きな求心力を持つ軸は存在しない。だから異端性を持つ宗派であっても、この軸さえ保っていれば大同団結でき、日本会議自民党を通して政治に関与することができる。逆に言えば、この軸を持たない宗派は日本会議に参画できず、その異端性のために他の勢力とも団結できない。政治参加を望むのであれば、独自に政党を作り、独自候補を立てるという手法を採ることになる。

本書では安丸良夫の理論を援用し、この「正統」と、正統の一部をその権威の拠り所としている「O(オーソドキシィ)異端」、天皇制的正統とは全く異なる思想的軸を持つ「H(ヘテロジーニアス)異端」の3つの分類を使う。

日本会議に参加するO異端的な宗教を挙げると、解脱会国家神道の在家講的存在である。手かざしで有名な真光系の崇教真光は、かなり積極的に現代医療を否定し、竹内文書の世界観を取り入れているなど異端的傾向が強いが、天皇は特別な存在として認め、日本中心主義、精神主義的な教義を持っている。

対してH異端的な宗教を見ると、創価学会は言うまでもなく日蓮宗系であり、政治進出のそもそもの目的は、日蓮の遺言である国立戒壇の設置であった。2代目会長戸田城聖は国教化が目的ではないとはしていたものの、天皇の法華教帰依を布教や国立戒壇設置の近道と考えていた。過去仏門に帰依した天皇上皇も多かったことを考えれば不可能ではないかもしれないが、明治以降の国家神道とは根本の部分で思想を異にするのは確かだろう。現在の創価学会は他の多くの日蓮宗系の諸派と同じく、(少なくとも国家施設としての)国立戒壇を設置するという目的は持っていないようだが。

幸福の科学幸福実現党も、政治的な主張は一見保守的だが、大川隆法への個人崇拝が根本である。霊言などでの扱いを見ても、天皇神道が世界観の中心にいないことは間違いない。

 

とまあ真面目な本なんですが、新興宗教に対する雑学的な興味で読んでも面白かったですよ。オウムと幸福の科学の、政治への期待と挫折については並べてみるといろいろと興味深いし、アイスター和豊帯の会女性党の実態については本書を読むまで全く知らなかった。「これからの時代は女性が作る」とかパプテマス・シロッコみたいなこと言ってる実業家がいるんすね。