なぜ活断層の基準が変わったか

敦賀原発直下に活断層があったため廃炉になりそうな情勢ですが、原子力規制委に一つ実績ができた形で良かったんじゃないでしょうか。

活断層定義「12~13万年」を「40万年」に : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20121208-OYT1T00627.htm

朝日新聞デジタル:原子力規制委、活断層の定義拡大 40万年前以降に活動 - 政治

http://www.asahi.com/politics/intro/TKY201212070685.html

 さて、8日の記事に活断層の定義が拡大されたというものがありなぜなのだろうと気になっていました。島崎邦彦・委員長代理によると影響は限定的らしいですが、今回の決定にも影響したのかなど気になるところではあります。この変更について書かれた日経のちょっと前の記事が面白かったです。

せめぎ合う理学と工学 原発が問う活断層の定義  :日本経済新聞 

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47767360X21C12A0TCR001/

 地震学や地質学の知見からは40万年以内という基準が常識だということですが、日本地質学会のページによると、『日本のような変動帯では,断層はいくつもの地質時代を通して形成されてきました.私たちは,崖の断面で地層のくい違いとして,断層をみることができます.  なかでも最も新しい時代の第四紀(約180万年前以降)に繰り返し活動した断層は,将来も活動する可能性が大きいので,活断層とよばれています.』だそうです。つまり40万年という基準も可能性が大きい中でも特に動く見込みが大きい、ということなのでしょう。

5万年→12~13万年→40万年と基準が広くなってきたわけですが、いずれも学問的な意味での活断層の定義とは大きく離れており、あくまで「原発を作るときに考慮しなければならない活断層」の定義なわけです。可能性の話をすれば活断層でなくても動く可能性はゼロではないですし、原発を作るためにはどこかで割り切ってリスクを引き受ける必要があります。どうやってどこまでが受け入れられるリスクかという基準を決める方法も明確ではありませんが、だからといって政治的・技術的な要請から逆算して安全の基準を定めてはいけないことはもちろんです。その意味でも今回規制委が科学的に判断されたことを守り筋を通したのであれば、まっとうな仕事をしたと言えるのではないでしょうか。

 

12月13日追記

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/38513.html

福島新聞の記事によるとD-1断層が動いたのは「十数万年前以降」だそうで。「12~13万年」にひっかかるのかどうか不明瞭です。

ただ浦底断層がうごいたのはもっと近い時期でそれに連動する可能性があるということなので、活断層の基準変更が今回の決定に影響があったかどうかはよくわかりませんね。